限定承認とは

限定承認とは

相続財産の中でプラスの財産が多い場合は当然ながら単純承認を選択し、また、マイナスの財産が明らかに多い場合は相続放棄を選択することになります。

しかし、相続財産の中のプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか判断に困る場合があります。

安易に相続放棄を選択したが、実際に調べてみるとマイナスの財産よりもプラスの財産の方が多かったとなると後悔をすることになるでしょう。

また、その逆で、プラスの財産が多いに違いないと早合点して単純承認してしまうと、これまた悔いを残すことになります。

このように単純承認か相続放棄か判断が難しい場合に選択されるのが、限定承認という方法です。

この限定承認について、民法922条には、次のように定められています。

「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。」※相続開始を知ってから3か月以内

相続財産の調査等をしていった結果、最終的にプラスの財産よりもマイナスの財産が多ければ、そのプラスの財産の範囲内で債務の弁済をすればいいというものです。被相続人としてはマイナスの財産を背負うことはありません。また、清算をして最終的にプラスの財産の方が多ければ、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いたものを承継することができます。

このように聞くと、限定承認はたいそうよい制度で広く利用されているのではないかと思われるかもしれませんが、実際はそうではありません。

それには、いくつか理由があげられます。

 

限定承認は共同相続人の全員で行う必要があります。

「相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。」(民法923条

相続人の中の1人でも単純承認を選択すると、限定承認を行うことはできないのです。相続人全員が足並みを揃えるのはなかなか大変です。

なお、相続人の中の1人が相続放棄を選択した場合は、その相続人は最初から相続人でなかったことになりますので、その相続放棄をした人を除いた残りの相続人全員で限定承認をすればよいとされています。

 

そして、限定承認の申述を行い、それが受理された場合は、限定承認者は以下のような手続きを踏まなければなりません

限定承認者は、

➀限定承認をした後5日以内に、限定承認した旨を公告をしなければなりません。

この公告とは、官報という国の機関紙上に、「限定承認をしたこと」及び「債権者は一定の期間内にその請求の申し出をすべき」旨を告知することをいいます。

また、限定承認者は

➁限定承認者は、知れている相続債権者及び受遺者には、各別にその申出の催告をしなければなりません。

そして、

➂限定承認者は、相続財産をもって、公告に定められた期間(2箇月を下ることはできない)内に申し出た債権者や初めから知れている債権者に対して、それぞれの債権額の割合に応じて、弁済をしなければなりません。ただし、抵当権等の担保を有する債権者は、優先弁債権を行使することができます。また、弁済に際して、不動産等の相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、その相続財産を競売に付さなければならないとされています。

さらに、限定承認を行う場合、相続財産は相続開始時に被相続人から相続人に対し譲渡されたものとみなされます。その譲渡によって含み益が発生する場合、それは被相続人の所得として譲渡所得税の課税対象となります。準確定申告の際にその所得による所得税も申告しなければなりません。

※確定申告をすべき者が死亡した場合、その相続人は、原則としてその相続の開始があったことを知った日の翌月から4か月以内に被相続人の所得について確定申告を行わなければなりません。それを準確定申告といいます。

これにより、限定承認では、単純承認の場合に比べて納めるべき税額が増えることもありえます。それがどれほどの額になるのか、相続財産の調査とともに税の専門家である税理士の先生に相談しながら、限定承認の申述を選択する方がよいと思います。

このように限定承認は、複雑な手続きを踏んで行わなければならないため、利用者が少ないのだと思われます。しかし、限定承認による承継は一番最初に書いたような利点があります。また、相続財産を競売に付して換価する場合に、限定承認者は、鑑定人の評価に従い相続財産の全部または一部の価額を弁済してその競売を止めることができます(民法932条)。つまり、どうしても手元に置いておきたい財産が相続財産中にある場合は、その価額を弁済して、取得できるということです。

相続放棄であるならば、初めから相続人でなかったことになりますので、このようなことはできませんが、限定承認の場合は、マイホームだけは残しておきたいとか、思い出の品だけは残しておきたいなどの希望があるとき、その価額を弁済することにより希望をかなえられる可能性が出てきます。

 

限定承認が有効だと思われる事案はあります。まずは、ご相談ください。