不動産の登記情報を確認していると、明治や大正、昭和初期に設定された抵当権の登記が抹消されずに残っているものを見かけることがあります。

被担保債権の弁済をしなかったために抵当権の登記が残っているのか、その当時、弁済をしたにもかかわらず抹消登記の申請を怠ったのかはわかりませんが、登記簿上に抵当権の登記が残っていることには違いがありません。

このような抵当権を休眠抵当権(休眠担保権)といいます。

登記簿上に休眠抵当権の登記が残っていると、不動産売却の妨げとなり、機会を逸することがありますので、早いうちに抹消登記を行った方がよいでしょう。

では、抵当権の登記の抹消はどのようにすればよいのでしょうか。

1.抵当権者との共同申請による抹消

通常、抵当権の抹消をする場合、抵当権者の協力を得て、共同申請により抹消手続きを行います。

共同申請とは、不動産の所有者と抵当権者が共同で抹消登記の申請を行うことをいいます。

しかし、大正や昭和初期の抵当権は、抵当権者が自然人(=法人ではない)であることが多く、今日では、登記簿上の抵当権者はほぼ死亡しています。

その場合には、その抵当権者の相続人全員の協力を得ることが必要となってきます。

抵当権が設定されたのが80年、90年も前のことですから、その抵当権者の相続人は大人数になっていてもおかしくはありません。

それら相続人の中には、外国籍の方がいたり、認知症などにより判断能力を失っている方が含まれているかもしれません。

そんな相続人一人一人に協力を求め、全員から実印の押印と印鑑証明書を得ることにより、抵当権の登記を抹消できるのです。

想像しただけでも、これを行うことには多くの時間と労力が必要とされることがお分かりになるでしょう。

そこで、一定の要件を満たした場合に、共同申請ではなく、簡易な方法で休眠抵当権を抹消できる方法が用意されています。

2.供託利用の方法による抹消

不動産登記法では、休眠抵当権(弁済期から20年を経過しているもの)の抵当権者が所在不明である場合、被担保債権の元本、利息、損害金の全額を供託することで、不動産の所有者が単独で抹消登記を申請できると定めています。

この方法を利用するには、まず抵当権者の所在が不明である必要があります。つまり、登記簿上の住所のみではその所在を確認できない場合がこれに該当します。

さらに、被担保債権の元本及び債権発生当時から弁済期までの利息並びに弁済期から今日までの損害金の全部を供託する必要があります。

このように聞lくと、大変な金額を供託しなければならないのかと思われるかもしれません。

しかし、今日とは貨幣価値の異なる明治や大正時代の抵当権の被担保債権額といえば、数十円や数百円程度です。

その程度の債権額であれば、元本、利息、損害金のすべてを供託してもそれほど大きな金額にはなりません。

例えば、大正5年に元金500円を利息年1割の約定で借りた場合、平成31年に供託する際の金額は、6000円程度となります。

ただし、抵当権が設定されたのが今日とあまり貨幣価値が変わらない時代であれば、被担保債権額が数百万円となっており、また、供託金額は高額になる傾向にあり、供託利用の方法による抵当権抹消登記は現実的には難しくなります。

その場合には、別の方法を検討して、抵当権の抹消を試みることになります。

休眠担保権でお困りの方がいれば、ぜひ当事務所にご相談ください。